Interview vol.01【beforetherainphotography】
2017年4月20日 people
フォトグラファーのRyuma Yorita氏とYuki Miyoshi氏がブライダル写真専門の事務所beforetherainphotographyを立ち上げて、ちょうど一年。二人がこの一年で感じたブライダルの現場でのカメラマンの立ち位置、そして今後ウェディングフォトグラファーとして生き抜くには何が必要か、お話を聞いてきました。
photo by beforetherainphotography
- −二人は自分たちの会社を立ち上げるまえからブライダルの撮影をしていたんですか?
- Yorita
- 僕は大学生のころからマグナム・フォトに憧れて報道カメラマンになりたかったです。東南アジアやアフリカに行って、コンゴ民主共和国の難民キャンプを撮影したり、当時はアンゴラが内戦状態で取材に行きたかったのですが、どうしてもビザが取れなくて、隣の国に行って取材や撮影をしていました。学生のころ毎日深夜にアルバイトして、昼は大学に行き、長い休みになったらすぐ海外に行くみたいな学生でした。現地の駐在員からUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)を紹介され、様々な難民キャンプを取材していました。大学を卒業しても、そういった写真が撮りたいから深夜のアルバイトを続けお金を貯めていました。当時はフィルム代だけでも100万円ぐらいつぎ込むので大変でした。でもある日、アルバイトの時間が長くて全然写真を撮ってないことに気づくのです。「このままだとまずい」って…。それから日常的に撮影が出来るブライダル写真専門の会社でアルバイトをするようになり、それがブライダル写真との出会いですかね。
- −ドキュメンタリーの写真が好きな人がブライダル写真を撮るのに違和感は無かったのですか?
- Yorita
- 最初はありましたよ。自分の大事にしてきた写真が商業的な写真を撮ることで汚したくないなって思っていました。でも海外のブライダルフォトグラファーの作品を研究したり、教えてもらったりして勉強していたときに「ウェディングの撮影もドキュメンタリーだよ」って友人に言われました。それで色々なことが腑に落ちたというか、それ以来自分のなかでブライダル写真を受け入れることができて、没頭しましたね。はまりました。
- Miyoshi
- 僕も大学生の頃から写真を撮っていました。周りにデザイナーやライターがいたので一緒に本を作ったりしていました。卒業してからは写真とは関係のない仕事に就いて、地元で10年間働いていましたが、その間にも会社に隠れて雑誌とか書籍の撮影をしていました。そんな生活を続けていくうちに「このままでいいのかな」って思いはじめ、やっぱり一度は好きな写真でチャレンジしたいという思いが募り、思い切って会社を辞めて東京に出てきました。京都でお世話になっていた出版社から東京での仕事を紹介してもらったりして、撮影の仕事をしていました。ブライダルの撮影は友人の結婚式を撮ったりはしていましたが、ただ、それが良い写真か悪い写真か分からなかったので、一度ちゃんと勉強したいなと思い、ブライダル専門の写真事務所で撮影するようになりました。
- −ブライダルの撮影って雑誌や広告の撮影現場と違って特殊じゃないですか。三好さんはウェディング写真を撮ってみて違和感は感じなかったですか?
- Miyoshi
- 僕は単純に人が好きなのと、その人の裏のストーリーを見るのが好きなんです。ウェディングは様々な人の人生が交わっているので、それを写真に残すことに興味がありました。それプラス、綺麗に撮りたいとか思い出と記憶に残る写真を撮りたいなって思うようになり、ウェディング写真にはまりましたね。ウェディング写真を撮る人って合う人と合わない人が凄くあると思います。僕の場合は最初からウェディング写真に違和感はなかったです。
- −ウェディングフォトグラファーとしての魅力って何だと思います?
- Y&M
- ブライダル写真も流行みたいなものがあって、一昔前は、お父さんが泣いてればそれを撮る、みたいなドキュメンタリーが主流だったりするけど、いまはドキュメンタリーの要素を含みつつファッション的な写真も求められています。でも、ウェディングフォトグラファーって自分の好きなテイストで撮れますよね。商業カメラマンだと、デザイナーとかディレクターみたいな人がいて、その人たちのイメージとすり合わせながら撮影をしていかなければならない。自分の撮りたいイメージを100%撮れないじゃないですか。でもウェディングフォトグラファーは、例えば僕らに結婚式を撮ってほしいカップルが来てくれたら、フォトグラファーの僕たちが撮りたいものが100%撮れます。何者にも縛られず写真に個性を出せますよね。いま写真界で大物写真家以外に個性を出せるフォトグラファーってウェディングフォトグラファーしかいないのではないかと思っています。
photo by beforetherainphotography
- −個性を出せないフォトグラファーは仕事が無くなるでしょうね
- Y&M
- よく「ウェディングフォトグラファーなんてつまらない」って言う人がいますが、欧米ではフォトグラファーがそれぞれの色を持っていて、それがお客さんを引き寄せる。新しいものを取り入れなければ廃れていく。ごく自然なことですよね。いままでの日本のウェディングフォトグラファーは、写真に個性を出すことを許されない形態だったと思います。だから、つまらないと感じていたのではないでしょうか。でも、これからの時代には、健全な競争があって僕たちも自分たちの個性を出すために学ぶことが楽しかったり冒険だったりしています。だからまだまだやれるなと思っています。その競争が苦しいと思えば仕事も無くなってしまうかもしれません。
- −beforetherainphotographyは、お二人で撮影するスタイルですよね
- Y&M
- そうですね。決してメインとサブみたいな感じではなく、二人の視点で撮っていきます。それぞれの良いと思う瞬間は違うし、単純に同じシーンを、一人は広角レンズで、もう一人は望遠レンズで撮ることができます。あとチームシューティング(2名体制で同じ被写体を撮影する)で撮った作品と一人で撮った作品では、やっぱり違いがあります。でも僕たちもまだまだで、二人で撮る写真の価値を高めたいと思っています。
- −自分たちの会社を立ち上げて、お客様との付き合いも変わりましたか?
- Y&M
- 僕たちは撮影をさせていただくお客様とパーソナルな関係を求めて独立しました。例えば挙式会場専属のカメラマンとして撮影だけして「はい終わりました」だと寂しいですよね。写真を気に入ったのかどうか分からないので、答え合わせができないです。それだとフォトグラファーとしてモチベーションも上がってきません。独立したいまは、単純に僕たちの撮る写真を気に入っていただいて、撮影前に打合せを重ね、撮影の時には新郎新婦をそれぞれ下の名前で呼ぶようにしています。そういった関係性の方が良い写真を撮れると思っています。
- −では最後に、今後ウェディングフォトグラファーはどうなると思いますか?
- Y&M
- お客様も良い写真を求める人達と、ただ記録として残せればいいと思う人達がいて、二極化していくと思います。それに対してウェディングフォトグラファーが「こんな素敵な写真を僕たちは撮れますよ」ってインスタグラムやフェイスブックで発信が出来る時代ですよね。ウェディングフォトグラファーは、言い訳の出来ない時代です。先ほども言ったように良い写真を求める人達が以前に比べて増えているように思います。その中で挙式会場の専属カメラマンを選ぶのか、僕たちのような挙式会場と契約していないカメラマンを選ぶのか。これだけのスピードで世の中が変わっていくなか、僕たちもまだまだ完成されているわけでは無いと思っています。日々勉強し、新しい形のウェディングフォトグラファーになれれば良いと僕たちも思っています。ウェディングフォトグラファーだけじゃなくて、広告や雑誌を撮影する世界中のフォトグラファーも同じ状況です。でもこれは現時点の話なので、3年後はまた変わっているかもしれません。僕らもドローンを持って撮影しているかもしれないし(笑)
左:三好氏 右:依田氏
- “愛し合う恋人たちや家族の姿をRyuma YoritaとYuki Miyoshi のふたりはこれまでずっと撮影してきました。
1日に1組だけ。わたしたちは本格的なチームシューティングで最高のクオリティと最高のクリエイティビティを追求しています”beforetherainphotography